伊藤公平
塾長室よりこんにちは。2021年5月28日に塾長に就任してから5ヶ月が経とうとしています。コロナ禍における東京都第3回目の緊急事態宣言中(4/25~6/20)に就任し、6月21日には一時的にまん延防止等重点措置に緩和されたものの、3週間後の7月12日から9月30日までは第4回目の緊急事態宣言となりました。私にとってはジェットコースターに乗り続けるような目まぐるしい毎日でしたが、秋学期を順調に始めることができたことを機会に「塾長室だより」と称した本連載を始めたいと思います。毎月を目処に慶應義塾の様子を報告して参りますので、気軽にお目通しいただけますと幸いです。第1号の今回は5ヶ月分の報告ということで少し長くなりますが、良い報告がたくさんありますのでお付き合いください。
新型コロナウイルス対策として約5万人のワクチン接種を、常任理事(医療担当)・北川さんと関連職員の企画運営のもと、三田キャンパスにおいて6月21日〜9月3日および9月15日に実施しました。詳細は報告とビデオに示すとおりで、約8割の塾教職員と塾生の接種を完了し、教職員(含む非常勤の方々)の同居家族、キャンパスで活動する委託職員・関連会社の方々等、合わせて約3万5千人の義塾関係者にワクチン接種を提供しました。また14大学+1機関の教職員と学生の希望者全員、30の国公私立大学等の留学希望者・医療実習生・運動部学生、文科省「留学予定者ワクチン接種支援事業」に応募した他大学・社会人の留学予定者等、合わせて約1万5千人の他大学関係者にワクチン接種を提供しました。本職域接種の発足に向けて6月9日に北川さんと私が発したビデオメッセージはそれなりの反響があったようで、6月18日の萩生田文科大臣(当時)会見(動画8分00秒からの部分)などでも取り上げていただけました。また、常任理事(危機管理担当)・岡田さんのもとで、希望する教職員・塾生に対して無料でPCR検査を提供する体制を整え、陽性の場合には慶應医療で一次対応ができる体制を整えました。検査体制、ワクチン接種体制、医療体制のすべてが揃うことで初めて安心な教育研究活動が実現できるということで、慶應義塾に医学部、看護医療学部、薬学部、病院、健康マネジメント研究科、保健管理センター、学生相談室が揃っていたうえに、数多くの関連病院が強力な支援の手を差し伸べてくださったことに心からのありがたみを実感してきました。医療系の教職員・塾員の皆様の多大なるご協力と、職域接種の機会をくださった政府や省庁関係者の皆様にも心から感謝しています。
このようなコロナ対応によって塾生生活にも進展が得られました。常任理事(国際担当)・土屋さんと学生部の尽力で多くの塾生が日本から海外への留学に旅立って行きました。第4回目の緊急事態宣言下(7/12~9/30)においても、常任理事(学事担当)・松浦さんと学生部の尽力で予定通りに対面授業と期末試験を続けることができました。さらに常任理事(学生生活担当)・奥田さん、常任理事(体育会担当)・山内さん、学生部、体育会の努力で塾公認団体(体育会とサークル等)の活動も続けることができました。そして首都圏の感染者数が劇的に増加した8月の第5波においても、慶應義塾の感染者数は減少を続けました!
これはひとえに塾生一人一人が感染対策を徹底した成果であり、塾生の責任感ある対応を大変誇りに思います。感染状況の好転は、9月大学院学位授与式、卒業式、入学式に加えて、昨年4月に入学した、今の学部2年生を中心とした「2020年度入学生の集い」の開催に繋がりました。快晴の日吉記念館での1年半遅れの“入学式”には実に多くの塾生が集まり、皆が笑顔で塾生としての喜びを分かち合ってくれました。学部・研究科ごとに分かれた1部、2部、3部のそれぞれで常任理事の山岸さん(動画42分20秒から)、松浦さん(動画44分08秒から)、天谷さん(動画42分45秒から)が素敵なスピーチを披露しました。慶應義塾大学病院・三四会・慶應医学会 100年合同記念式典・シンポジウムも開催されました。
研究環境の整備でも多くの進展がありました。常任理事(研究担当)・天谷さんと医学部・健康マネジメント研究科教授・武林亨さんが、14研究科委員長と一致団結して、慶應義塾の後期博士課程(修士号取得後の博士課程)に在籍する塾生が専門や研究科の枠を超えて協調する「未来社会のグランドデザインを描く博士人材の育成」プロジェクトを発足し、科学技術振興機構・次世代研究者挑戦的研究プログラムに応募して採択されました。慶應義塾には毎年1250名程度の後期博士課程の塾生が在籍しますが、本プロジェクトの採択により260名程度に生活費220万円/年と研究費30~100万円/年が3年間に渡り支給され、分野横断型でグローバルシチズンとしての未来社会デザインに取り組むことになります。また、科学技術振興機構の大型研究プロジェクトERATOの研究総括に薬学部教授・有田誠さんが選定され、「リピドームアトラス」プロジェクトを牽引します。ERATOの研究総括とは世界的な研究者のみが選ばれるものであり、そのヘッドクオーターが薬学部芝共立キャンパスに設置されることは大変に誇らしいことであります。その他にも多くの研究成果が塾HPに掲載されています。
スポーツでのハイライトも体育会HPにリストされているとおりで、野球部の34年ぶり大学日本一、庭球部のインカレ男女シングルスと男子ダブルス優勝等々、特筆すべきものがたくさんありました。そして夏のTOKYO 2020です。塾HP「オリンピック・パラリンピックが閉幕」が示すとおり、TOKYO2020には10名の塾生・塾員が参加して熱戦を繰り広げ、アーチェリー団体における武藤弘樹選手の銅メダルや、オリンピック日本選手団主将に選ばれた山縣亮太選手が脚光を浴び、英国オリンピック・パラリンピックチームが日吉キャンパスで事前トレーニングキャンプを実施し、慶應義塾大学病院が新国立競技場の医療・緊急対応を担当しました。慶應医療チームはテロ対策や災害も含めた研修を積み、英国チームを受け入れた日吉キャンパスではパンデミック下でのイベント開催に関するノウハウを蓄積しました。これらの経験は、将来の危機対応という観点から慶應義塾の力を大いに高めました。また環境情報学部教授・田中浩也さんがオリンピック表彰台を3Dプリンタにより製造設計し、環境情報学部准教授・松川昌平さんが東京2020 NIPPON フェスティバルでアルゴリズミックデザインを担当しました。詳細は三田評論で特集を組みますので楽しみにお待ちください。
グローバルな活動では、世界大学就職ランキングで慶應義塾が56位にランクインしました。また国際生物学オリンピックに派遣する日本代表選考を兼ねた日本生物学オリンピックを山形県鶴岡市の慶應義塾大学先端生命科学研究所が共催で開催しました。コロナ禍においても慶應-スタンフォードWebinarやKMDとUniversity College Londonのオンラインシンポジウムなどの国際学術交流が積極的に実施されてきました。
ハイライトはまだまだあります。7月、三田キャンパス慶應義塾図書館旧館に福澤諭吉記念慶應義塾史展示館が開館し一般公開が始まりました。「ここで展示される内容は、決して一私立学校の内輪の歴史ではなく、近代日本の格闘そのものといっても過言ではありません。それは決して平坦ではなく、挫折に満ちたものともいえます。福澤諭吉・慶應義塾の歩みを知ることは、日本の近代を多面的・立体的に見つめ直す視座を与えてくれるはずです。(塾史展示館HPより)」常設展示室では、福澤先生書「慶應義塾の目的」、サンフランシスコでの福澤先生と少女の写真といった数多くの別品が鑑賞できます。そして第1回企画展「慶応四年五月十五日 福澤諭吉、ウェーランド経済書講述の日」では、動乱の江戸においても洋学の灯を消さない、学びを止めないという福澤先生の毅然とした姿勢が貴重な史料と共に紹介されました。コロナ禍において私たちがとるべき行動を指南する力強い展示でした。YouTubeミニレクチャーシリーズ「ウェーランド経済書とは?(常任理事 池田さん)」、『ウェーランド「モラルサイエンス」(経済学部准教授 アルベルト・ミヤン・マルティンさん)』、「塾歌の歌詞に込められた意味とは?(常任理事 山内さん)」、『慶應義塾原点の精神「自我作古」(常任理事 岩谷さん)』も是非ご視聴ください。慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)やアート・センターでも素晴らしい展示が開催されています。その様子は次号以降でご紹介しますが、感染状況が落ち着いている今がチャンスですので、是非とも三田キャンパスにお運びいただき、塾史展示館、KeMCo、アート・センターを鑑賞いただけますと幸いです。