伊藤公平
塾長室よりこんにちは。秋の風を感じながら塾生たちが元気にキャンパスで学んでいます。11月20~23日には
三田祭も対面で開催されます。
さて学問の秋。慶應義塾が学問を通じて貢献すべき現代社会の課題を常任理事会で検討し、理事会、評議員会、塾内の教職員に発表しました。基本概念は「未来の先導者、グローバルシチズンとしての理想の追求」であり、その柱として
1. 民主主義と社会平和の健全な発展
2. 協生社会の実現と経済社会の維持
3. 持続可能な社会の構築と生活の質の向上
4. 科学技術の革新と自然環境の保全
5. 医療・データサイエンスの新展開による健康で幸福な人生の達成
の5本を据えました。教職員一同、想像力豊かに自らの教育・研究・職務目標を5本の柱に関連づけ、創造的に全社会を先導することを心がけます。そして、教職員、塾生、塾員、社会が一体となって未来社会デザインとその実現に向けて躬行実践する仕組みを考え、アクションプランとしてまとめて参ります。以上の方針に沿って様々なプログラムを作り上げて参りますのでご期待ください。
全国レベルでは10月31日に実施された衆議院議員選挙が一大イベントでした。そして
48名の塾員の方々が当選されました。心からお祝い申し上げます。去る9月27日、慶應義塾大学書道会創立百周年記念展を訪れたおり、犬養毅の書に見入る私の写真が
東京新聞に掲載されました。犬養は明治(1876)9年に入塾、明治13(1880)年には三田演説館で開催された模擬議会(擬国会)において言論の力を大いに発揮したことを鎌田榮吉が『犬養木堂伝』(木堂先生伝記刊行会・鷲尾義直編)の中で述べています。帝国議会が開設されるのが10年後の明治23(1890)年ですから、福澤先生と慶應義塾が時代の先駆者として言論の力を信じた議会制を我が国に根付かせようと尽力されていた様子がうかがえます。その後、犬養は福澤先生の力添えもあって大隈重信が立ち上げた立憲改進党に参加し、第一回衆議院の議員となり、最後には首相となって五・一五事件で銃弾に倒れる寸前まで「話せばわかる」と言論の力を信じ、「ペンは剣よりも強し」を実践されました。塾員として議員になられた方々にも、塾の伝統である言論の力を大いに発揮され、難しい国際情勢においても言論に基づく外交力を大いに発揮してくださることを願います。そして「この人民ありてこの政治あるなり」と福澤先生が『学問のすゝめ』に記されたとおり、慶應義塾においても一人一人が責任を自覚しながら言論の力を磨き続けたいと思います。
その他の慶應義塾関連のハイライトは以下のとおりです。
JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)に2件のプロジェクト採択大学等が中心となって未来のあるべき社会像を策定し、その実現に向けた研究開発を推進する大型プロジェクトがCOI-NEXTです。今年度の採択件数が17件と限られる中に、本塾からの
応募2件(本格型と育成型)がリストされたことは誠に喜ばしいことです。
本格型として「誰もが参加し繋がることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズ共創拠点(プロジェクトリーダー 医学部・教授 中村雅也さん)」が採択されました。東京医科歯科大学病院と慶應義塾大学病院・医学部が医療データを整理し、理化学研究所・東京工業大学・慶應義塾大学理工学部が協調することで、両病院での治療を経験した患者の方々が「病後」においても幸せな人生を送るために必要なプラットフォームを整備します。そして、データサイエンスやAIを駆使し、ここから見出される知見を、広く万人の病気の予防や、病後の回復の発展に役立てます。このプロジェクトに様々な企業と自治体が参画してくださいます。
育成型として「デジタル駆動 超資源循環参加型社会 共創拠点(プロジェクトリーダー 環境情報学部・教授 田中浩也さん)が採択されました。デジタルプラットフォーム・IoT・3D製造技術を導入して、鎌倉市において「プラスチック地捨地消」(プラごみの大幅減量や資源化)を進めるもので、鎌倉市と(株)カヤックを幹事として、複数の大学や企業が参画するものです。観光都市鎌倉でのゴミを徹底的に減らすという非常に挑戦的な取り組みです。
スポーツの秋、文化の秋以下大会で慶應義塾が優勝しました。野球部が東京六大学野球秋季リーグ戦、準硬式野球部が東京六大学準硬式野球秋季リーグ戦、庭球部男子団体および女子団体が王座出場校決定トーナメント(関東団体予選)、庭球部女子団体が全日本大学対抗テニス王座決定試合、水上スキー部女子が全日本学生水上スキー選手権の団体総合、自動車部が関東学生対抗軽自動車5時間耐久レース(学生一般の部)、端艇部カヌーの選手が全日本学生カヌースプリント選手権大会の男子カヤックシングル200m、新人部門男子カヤックシングル500m、水泳部の選手が第97回日本学生選手権水泳競技大会にて、100mおよび200m平泳ぎでそれぞれ優勝しました。詳しくは
体育会のウェブサイトをご覧ください。文化団体の塾生もコンサート、展覧会等の活動で文化の秋を彩っています。
慶應医学賞受賞者との対談塾長として
慶應医学賞を受賞された濡木理博士とKatalin Karikó博士と対談しました。慶應義塾の5万人ワクチン接種で利用した新型コロナウィルスワクチンはKarikó博士の基礎研究によって開発されました。キャンパスライフを取り戻すきっかけをくださった大の恩人です。Karikó博士は自分の研究が思うように進まず、ワクチン開発が難しいと学会が感じたときでも、慶應を含む日本の科学者たちが励まし続けてくれたと語ってくださいました。