2015年の厚生労働省の発表によると10年後には認知症患者数は700万人にのぼり、高齢者の5人に1人が認知症である計算になる。日本の人口構成の高齢化に伴い増加する認知症の医療と対策は、21世紀の避けられない重大な課題である。このような社会的状況を見据え、慶應義塾大学病院では、神経内科および精神・神経科の2診療科合同で、平成20年より認知症診療に特化した専門外来「メモリー外来」を開設している。 本書は、10年近くになるメモリー外来での診療を踏まえ、患者様、ご家族の方からの実際の声をもとにした一般向けの認知症解説書である。認知症のメカニズムから、予防、診断治療そして介護に至るまで専門医の立場からに平易に説明している。 近年、分子PETイメージングの発展により、アルツハイマー病では認知障害が顕在化する約20年前から病因であるベーターアミロイドの蓄積が先行していることが分かってきてた。すなわち、働き盛りの40-50代から脳の病理異常が始まっている人がいる。この状態は物忘れが出るまえのアルツハイマー病という意味で「プレクリニカル・アルツハイマー病(本書ではプレクリニカル認知症と記載)」と呼ばれ、アルツハイマー病の予防対象として注目されている。本書では、この新しい概念であるプレクリニカル認知症について概説し、中年期からの認知症予防の重要性を強調している。