慶應義塾大学理工学部電子工学科の内田建教授らは、グラファイトのナノスケールの薄膜(グラフェン)とパラジウム・ナノドットを用いた水素センサを作製し、分子100万個中で1万個レベルの水分子数の変動があっても、たった10個程度の水素分子の存在を検出することに成功しました。電気エネルギーによって発生した熱をナノスケール材料であるグラフェンに局在化させることにより、グラフェン上のパラジウム・ナノドット触媒への水分の影響を除去する技術を開発し利用しました。また、ナノスケール材料は熱を蓄える機能が低いことを利用して、高温の水素検出モードと、低温の水分検出モードを電気信号で高速に切り替え可能であることを示しました。これは、ナノスケール材料に局在化する熱を制御することで、センサに与える電圧を変えるだけで検知対象ガスを高速で切り替え可能な分子センサを実証したものです。今後のモノのインターネット(IoT)時代では、様々な目的で多様な分子を検出することが重要になります。今回開発した技術をさらに発展させ、たった1個の低エネルギー・ナノセンサで、さらに多数の分子を識別して検出できれば、スマートフォンや小型マイクに搭載し、話者の呼気に含まれる様々な分子の情報で健康状態を管理するなど、ビッグデータ社会を支えるキー・デバイスとなることが期待されます。
本研究成果は、2018年7月3日に米国化学会の科学雑誌「ACS Applied Nano Materials」のオンライン速報版で公開されました。
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