慶應義塾大学、ミシガン大学(米国)、シカゴ大学(米国)、は、乳幼児期の腸内細菌叢の成熟化が腸管感染抵抗性に重要であることを明らかにしました。これは慶應義塾大学薬学部の金 倫基(きむ ゆんぎ)准教授(前ミシガン大学医学部病理学部門研究員)、慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)の福田 真嗣(ふくだ しんじ)特任准教授(JSTさきがけ研究者)、ミシガン大学医学部病理学部門のGabriel Nunez(ガブリエル ヌネッツ)教授・坂本 啓(さかもと けい)博士研究員、シカゴ大学病理学部門のCathryn R. Nagler(キャスリン ナグラー)教授、を中心とする研究グループの成果です。
乳幼児は腸管病原菌に対して感染しやすい(感受性が高い)ことが知られていますが、その詳細なメカニズムについては未だ不明な点が多く残されていました。今回研究グループは、腸内細菌を全く持たない無菌マウスを無菌環境下で飼育し、メタボローム解析技術を駆使することで、乳幼児の腸管感染に対する高い感受性は、乳幼児の腸内細菌叢が未成熟であることに起因することを明らかにしました。また、この乳幼児の腸管病原菌感染に対する高い感受性は、クロストリジウム目菌群の欠如によることも明らかにしました。さらに、乳幼児の未成熟な腸内細菌叢から産生される代謝物質が、クロストリジウム目菌群の腸内での増殖を促進することで、腸管感染抵抗性がもたらされることも明らかにしました。
本研究は、乳幼児期に腸管感染症の感受性が高いことの一因として腸内細菌叢が未成熟であることを明らかにしたものであり、今後は乳幼児の腸管感染抵抗性を強化するために、腸内細菌叢をターゲットにした新たな予防・治療法開発等の臨床応用への発展が期待されます。本研究成果は、2017年4月21日(米国東部時間)に国際学術誌Science電子版に掲載されます。
プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。