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[プレスリリース]
腸内細菌が作る酪酸が制御性T細胞への分化誘導のカギ
-炎症性腸疾患の病態解明や新たな治療法の開発に期待-

研究医療
2013/11/12  独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東京大学
慶應義塾大学先端生命科学研究所
独立行政法人科学技術振興機構

本研究成果のポイント
・食物繊維が多い食事を摂ると酪酸が増加
・酪酸が制御性T細胞への分化誘導に重要なFoxp3遺伝子の発現を高める
・酪酸により分化誘導された制御性T細胞が大腸炎を抑制

理化学研究所(理研、野依良治理事長)、東京大学(濱田純一総長)、慶應義塾大学先端生命科学研究所(冨田勝所長)は、腸内細菌が作る酪酸が体内に取り込まれて免疫系に作用し、制御性T細胞という炎症やアレルギーなどを抑える免疫細胞を増やす働きがあることを明らかにしました。これは、理研統合生命医科学研究センター(小安重夫センター長代行)粘膜システム研究グループの大野博司グループディレクター、東京大学医科学研究所(清野宏所長)の長谷耕二特任教授(JSTさきがけ研究者)、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任准教授を中心とする共同研究グループによる成果です。

ヒトの腸管には500~1,000種類、100兆個以上の腸内細菌が生息し、この腸内細菌が消化液では分解できない食物繊維などを微生物発酵(腸内発酵)により代謝し、有用な代謝産物に作り替える働きをしています。こうした代謝産物は腸管粘膜でエネルギー源として使われるほか、腸の収縮運動を高める働きをしています。これまである種の腸内細菌に炎症やアレルギーを抑える効果があることが知られていましたが、そのメカニズムは分かっていませんでした。

今回、共同研究グループはマウスに食物繊維が多い食事(高繊維食)を与えると、制御性T細胞への分化誘導が起こることを発見しました。高繊維食を与えたマウスでは低繊維食を与えたマウスに比べて腸内細菌の活動が高まっており、代謝産物のひとつである酪酸の生産量が多くなっていました。さらに、この酪酸が制御性T細胞への分化誘導に重要なFoxp3遺伝子の発現を高めていることも明らかになりました。

つまり、食物繊維の多い食事を摂ることで腸内細菌の活動が高まり、その結果多量の酪酸が作られ、この酪酸が炎症抑制作用のある制御性T細胞を増やしていると考えられます。実際に大腸炎を起こす処置をしたマウスに酪酸を与えたところ、制御性T細胞が増え、大腸炎が抑制されました。

クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の患者の腸内でも、酪酸を作る腸内細菌が少ないことが知られています。今回の発見は、腸内細菌が作る酪酸には炎症性腸疾患の発症を防ぐ役割があることを示しており、病態の解明や新たな治療法の開発に役立つと期待できます。

本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業さきがけとして行われました。本研究成果は、英国の科学雑誌『Nature』に掲載されるに先立ち、オンライン版(11月13日付:日本時間11月14日)に掲載されます。

プレスリリース全文は、以下をご覧ください。

プレスリリース(PDF)