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[プレスリリース]
有機超薄膜に金属ナノクラスターの電極を形成する技術を開発
-有機薄膜デバイスの高性能化へ道を開く-

研究
2013/10/07  科学技術振興機構(JST)
慶應義塾大学

ポイント
・炭素原子がサーカーボール状になったフラーレンの薄膜上に、銀ナノクラスター(銀の原子レベルの集団)を固定化することに成功。
・固定化した銀ナノクラスターを介し、フラーレン薄膜に電子と正孔を注入できることを確認。
・金属と有機薄膜の界面における電荷の注入・分離・蓄積などを精密制御する方法に道を開くことが期待される。

JST 課題達成型基礎研究の一環として、慶應義塾大学 理工学部の中嶋 敦 教授らの研究グループは、機能性有機分子で作った数ナノメートル(ナノは10億分の1)の超薄膜上へ、金属電極を形成する技術を開発しました。

有機薄膜デバイスの実用化、高性能化へ向けた研究開発が世界的に進められています。これらのデバイスでは、金属電極と有機薄膜間に形成される界面の構造や電子特性がデバイスの性能を支配します。通常、有機薄膜上への電極形成は金属原子の蒸着を使いますが、金属原子が薄膜内に侵入して有機薄膜の破壊や電極間の金属架橋形成などが起こり、デバイス特性が著しく劣化することが問題とされていました。

今回研究グループは、原子の代わりに銀のナノクラスターを用いて、有機分子の1つであるフラーレンの超薄膜上へ蒸着し評価する研究を進めました。その結果、蒸着条件の最適化によって、さまざまなサイズのナノクラスターをフラーレン薄膜表面へ安定的に固定化できることを見いだしました。この時、フラーレン薄膜の秩序性が損なわれることはありませんでした。さらに、銀ナノクラスターを介してフラーレン層の最表面に電子および正孔を注入できることも確認できました。

この成果は、金属ナノクラスターを有機薄膜表面に安定に固定化する技術と、それを原子レベルの精度で評価する技術の統合によって実現したものです。これは有機薄膜上に、金属原子の侵入のない電極を形成する新手法を提示したばかりでなく、界面における電子・正孔の注入・分離・蓄積などを精密に制御するための方法の確立に道を開くものであり、有機機能薄膜を太陽電池や波長変換素子、センサーなどに応用展開するための基盤となる重要な技術的指針を提供するものです。

本研究成果は、ドイツの学術誌「Advanced Functional Materials」のオンライン速報版で近日中に公開されます。

プレスリリース全文は、以下をご覧ください。

プレスリリース(PDF)