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[プレスリリース]
大動物を用いた肝臓の脱細胞化骨格の作成と体外で肝細胞機能の維持に成功
̶肝臓などの臓器再生と新たな再生医療の実現化に期待̶

研究医療
2012/09/24  慶應義塾大学医学部

日本では、年間4万人以上と言われる肝疾患(肝細胞癌、ウィルス性肝硬変など)患者のうち、重篤な肝不全などの関連する病気により、年間約1万人が亡くなっています。重篤な肝不全で唯一根本的に治癒の見込める治療法は肝移植ですが、肝臓を提供するドナー不足により、肝移植を受けられるのは、移植を必要とする患者の3割にも満たないと考えられています。また、大きな侵襲を伴う肝移植手術を行うことなく、自己再生能を有する肝臓をいかに再生し、新たな治療法として臨床に応用する肝臓の再生医療の開発が望まれています。
慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器外科)の研究グループ(北川雄光教授、田邉稔准教授、八木洋助教)はピッツバーグ大学(Soto-Gutierrez A 助教)らとの共同研究において、肝臓から生きた細胞をすべて除去し、骨格だけの半透明な構造を大動物(ブタ)から作成し、そこに再度別のブタの肝臓から分離した肝細胞を生着させることで再細胞化する「脱細胞化」というユニークな手法を用いて、体外で肝細胞機能の一部を維持することに成功いたしました。
臓器の細胞外マトリックス骨格だけを残し、そこに臓器が再生するために必要な細胞を入れることによって、移植可能な構造を臓器単位で作成するというコンセプトに基づいたこの技術は、再生医療実現化のための受け皿として、これまで組織レベルあるいはマウスやラットなどの小動物を使って徐々に発展してきました。また、この技術を用いて、皮膚・器官・血管・関節・心臓弁などでは、実際の再生医療に応用された例が報告されていますが、消化器分野ではその構造と機能の複雑さから、再生医療への実現は困難でした。
本研究成果により、大動物の肝臓を使って技術的に移植可能な構造を再現できたことは、これまで困難であった肝臓、膵臓、腎臓などの実質臓器の再生と、今後の臓器の再生医療実現化へ向けて大きく飛躍させる技術革新となる可能性が期待されます。
この研究成果は、科学誌「Cell Transplantation」に掲載されました。
本研究はJSPS科研費23689059、慶應義塾大学次世代研究プロジェクト推進プログラムなどの助成を受けたものです。

プレスリリース全文は、以下をご覧ください。

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