慶應義塾大学医学部の脊髄損傷治療研究グループ(整形外科学教室(中村雅也教授)、生理学教室(岡野栄之教授)、リハビリテーション医学教室(里宇明元教授))では、これまで神経幹細胞移植単独では機能回復が得られないとされていた慢性期脊髄損傷に対して、適切なリハビリテーションを併用することで機能回復が相加的・相乗的に促進されることを明らかにしました。
脊髄損傷の後遺症に苦しむ患者は、受傷後から時間が経った慢性期に多く見られます。脊髄損傷に対する神経幹細胞移植の効果は、受傷後間もない急性期~亜急性期(受傷後数週間以内)を中心に報告されてきましたが、慢性期では細胞移植単独では効果がないと考えられており、亜急性期を逃すと神経幹細胞移植は行えない、あるいは行っても効果が得られないことが懸念されてきました。
本研究グループは世界で初めて、マウス慢性期脊髄損傷モデルに対する神経幹細胞移植と歩行訓練の併用療法が、相加的・相乗的効果によって有意な運動機能回復を導くことを明らかにしました。受傷後長時間が経過していても、細胞移植にリハビリテーションを併用することによって機能回復が期待できることを示した本研究は、脊髄損傷に対する再生医療の新しい扉を開くものであると言えます。
本研究成果は、2016年8月3日(英国時間)の科学専門誌「Scientific Reports」誌のオンライン版に掲載されました。
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