慶應義塾大学医学部解剖学教室(相磯貞和研究室)の笹部潤平専任講師、ブリガム・アンド・ウイメンズ(Brigham and Women’s)病院感染症部門・ハーバード大学医学部のMatthew Waldor教授らの研究チームは、九州大学大学院薬学研究院、株式会社資生堂との共同研究により、腸内細菌によってつくられるD型アミノ酸がマウスの腸内で代謝されて腸内環境維持に役立てられる仕組みを世界で初めて明らかにしました。
すべての生命でタンパク質合成に利用されるL型アミノ酸に対し、D型アミノ酸の多くは哺乳類ではつくられず、主に細菌内で利用されていると考えられてきました。しかし、今回の研究成果によって、複数のD型アミノ酸が哺乳類の腸内細菌によって作り出されており、哺乳類が分泌する酵素によって腸内で調節されていることを明らかにしました。さらに、腸内での哺乳類と細菌間のD型アミノ酸の相互代謝作用は、コレラ菌などの病原性細菌に対する粘膜防御や常在腸内細菌叢の維持に役立っていることが判明しました。
近年、腸内細菌叢はヒトの正常な免疫の構築や様々な病気との関わりが注目されています。今回の研究で得られた知見は、ヒトの免疫システムや病気の成り立ちの理解を深めることに繋がるとともに、腸内のD型アミノ酸代謝を通じた新規の感染症治療への応用が期待されます。
本研究成果は2016年7月25日(英国時間)に「Nature Microbiology」のオンライン版に公開されました。
プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。