12月9日(土)、三田キャンパス東館にて、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)創造クラスター「西洋初期印刷本の書誌学的研究成果を統合する画像付きデータベースの構築」プロジェクト主催による国際シンポジウム「The Book in Transition, the East and the West」 が開催されました。
第1部では、ポール・ニーダム博士(プリンストン大学シャイデ図書館)が「グーテンベルク聖書の家族-いとこ、子供、孫たち」、佐々木孝浩教授(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫)が「日本の初期活字印刷本について-写本と版本の関係を中心に」と題して、それぞれ西洋と東洋の初期書物文化について基調講演を行いました。ニーダム博士は、西洋印刷文化の嚆矢となったグーテンベルク聖書が、それまでの聖書の伝統を引き継ぎつつ、いかにして新たな系譜の原点となり、後世に影響を与えたのかについて、さまざまな資料を例示しながら描きだしました。また佐々木教授は、日本の古活字版に見られる特徴について、朝鮮や中国の出版物のみならず、キリシタン版をも含めた具体的な書物の比較から検討し、書物文化の複雑な関係性を浮き彫りにしました。
第2部では、世界各国から参加した7名の研究者が、中世末期から近代初期の書物に関する事例研究を発表しました。第3部では、発表者全員と参加者との自由討論が行われ、活発な質疑応答と議論がなされました。創造クラスターのサブリーダーである松田隆美文学部教授が閉会の辞を述べ盛会のうちに終了しました。
当日の発表はすべて英語で行われましたが、70名以上の参加がありました。また会場内の一角には、羊皮紙工房の八木健治氏の協力により、体験型展示「Transition of Book Production」 も開催されました。