12月8日(木)、三田キャンパス北館ホールにて小泉信三記念講座が開催され、山内慶太看護医療学部教授の司会のもと、橋本五郎氏(読売新聞特別編集委員)による講演「戦後日本と小泉信三先生-没後五十年に際して」が行われました。橋本五郎氏は慶應義塾大学法学部卒業後、読売新聞社に入社し、政治部長、編集局次長、編集委員等を歴任、2006年より特別編集委員を務めています。
今回の講座では、小泉信三没後五十年にあたり、小泉信三が戦後日本の学界、論壇で果たした役割について、「共産主義への批判」、「平和論-全面講和論・中立論の矛盾」、「東宮の御教育参与」の三つの視角から論じられました。橋本氏は、戦後日本の出発にあたって、マルクス主義・共産主義の影響は今では想像できないほど甚大なものがあったと述べ、その中で、小泉信三はよき意味での保守体制の象徴的存在であったとの見解を示しました。また、戦後世代の知識人は、小泉はじめ哲学者和辻哲郎、歴史学者津田左右吉、法哲学者田中耕太郎らを、もはや役割が終わった旧世代と位置づけたが、今から振り返ると、戦後日本の再建と成長は、むしろこうした旧世代が抱いた精神が支柱になって行われたとみることができるのではないかと語りました。
話題は憲法や皇室関連、東京五輪にも広がり、橋本氏は時には熱い語り口で様々な側面から現代の問題への見解を述べました。