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[特集] ひろがる慶應義塾 —地域連携キャンパスと国内外の拠点(2)

 
2014/12/22  慶應義塾

義塾には6つの主要キャンパス以外にも、国内外の各地にさまざまな特徴を持つ拠点があります。自治体と連携して設立されたタウンキャンパスでは、義塾の教員・研究者、塾生たちが世界をリードする最先端の研究を行うとともに、地域との交流を深めています。その他にも、海外における義塾の拠点として機能しているオフィスなど、未来に、そして世界にひろがる慶應義塾を紹介します。

(「塾」2014年 AUTUMN(No.284)掲載)

<鶴岡タウンキャンパス>地域と連携し、鶴岡を世界のバイオタウンに

キャンパスセンター棟
▲キャンパスセンター棟
山形県鶴岡市の慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス(TTCK)は、2001年4月に義塾と山形県および庄内地域市町村との連携により開設され、先端生命科学研究所(IAB=Institute for Advanced Biosciences)が置かれています。

IABにおける研究は、JR鶴岡駅南側のキャンパスセンター棟、北側のバイオラボ棟の2施設で主に行われています。センター棟が位置する鶴岡公園は、豊かな緑とお堀の水に囲まれた静かな環境です。同じ敷地には、東北公益文科大学大学院と、「致道ライブラリー」があります。この図書館は、学生や研究者に限らず誰でも利用できます。 
バイオラボ棟
▲バイオラボ棟
一方のバイオラボ棟では、メタボローム解析などのバイオに関する実験が行われており、隣接する鶴岡メタボロームキャンパスには、49セットのメタボローム解析装置が置かれています。バイオラボ棟の施設内にはジャグジーがあり、疲れた身体を休めることもできます。バイオラボ棟の近くにはIABの研究から生まれたベンチャー企業の「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(HMT)」(2013年12月東証マザーズ上場)と「スパイバー株式会社」があります。

HMTは、曽我朋義環境情報学部教授が開発したCE-MS解析法(後述)を中心に、メタボローム分析受託などを行っており、スパイバーはIABで研究をしていた関山和秀(せきやま かずひで)代表執行役(2005年環境情報学部卒)が研究開発した、強靭かつ柔軟な”人工のクモの糸”繊維を事業化した会社です。
環境情報学部 冨田 勝(とみた まさる)教授
▲環境情報学部 冨田 勝(とみた まさる)教授
「なぜ義塾が首都圏から遠く離れた鶴岡に研究所を作ったのか、と疑問に思うかもしれませんが、欧米の主要研究所のほとんどは自然豊かな地方にあります。日本のように大学や研究所が都市部に集中していることがむしろおかしいと思います。鶴岡は美しい自然と文化に囲まれ、空気がきれいで旬の野菜や魚が美味しく、腰を落ち着けて研究に取り組むにはもってこいの場所です。これからも独創的で斬新なアイデアを鶴岡から次々に生み出し実現することで、地方活性化の成功例となり日本を牽引することが私たちの使命です」と話すのは、研究所所長の冨田勝環境情報学部教授です。

政策・メディア研究科先端生命科学プログラムを専攻する大学院生は鶴岡に居を移して研究に打ち込んでいますが、湘南藤沢キャンパス(SFC)でバイオを学ぶ学部生は2学期間(または1学期間)、TTCKの宿舎に滞在する「バイオキャンプ」に参加して実験の基礎を学び、単位を取得します。
環境情報学部 曽我朋義(そが ともよし)教授
▲環境情報学部 曽我朋義(そが ともよし)教授
今年6月に国際メタボローム学会第10回国際会議が開かれたように、鶴岡がバイオの、なかでも世界的なメタボローム解析の地となった大きな理由は、曽我教授が開発した世界初のCE-MS技術にあります。

「メタボロームとは細胞内の全代謝物質の総称。哺乳動物で数千種類といわれる代謝物質を一斉に測定できる分析法が、キャピラリー電気泳動—質量分析装置(CE-MS)による測定法です。イオン性物質なら何でも測定でき、義塾の医学部や薬品メーカーと共同で、生体や組織の異常を示す低分子バイオマーカーの探索などを行っています」(曽我教授)

曽我教授の次のテーマはがん細胞の代謝の研究。「特異的代謝を見つけることができれば、世界的な発見となり、新しい薬の開発に役立つはずです。社会に役立つ仕事をするのが、研究者の使命ですから」
バイオラボ棟では、メタボローム解析などのバイオに関する実験が行われている
▲バイオラボ棟では、メタボローム解析などのバイオに関する実験が行われている
バイオラボ棟施設内ジャグジー
▲バイオラボ棟施設内ジャグジー
鶴岡メタボロームキャンパスには、49セットのメタボローム解析装置が置かれている
▲鶴岡メタボロームキャンパスには、49セットのメタボローム解析装置が置かれている

研究生活にも忙中閑あり。休日は海や山でリフレッシュ

政策・メディア研究科後期博士課程1年 石井千晴(いしい ちはる)君
政策・メディア研究科後期博士課程1年 石井千晴(いしい ちはる)君
▲政策・メディア研究科後期博士課程1年 石井千晴(いしい ちはる)君
オープンキャンパスでバイオ研究のことを知り、環境情報学部へ。学部時代は、春・夏の休みを利用し、鶴岡に来て実験をしました。修士からは鶴岡に移り住み、研究に明け暮れながら快適に暮らしています。現在の研究テーマは、腸内の細菌の構成や細菌が産生する物質を、DNA塩基配列分析やメタボローム解析を組み合わせて解析し、健康との関係を調べることです。将来的に健康診断に腸内細菌検査が加わり、かかる可能性のある病気を予測し、食生活の改善によって未然に防ぐことができればと考えています。

ラボとシェアハウスを往復する毎日ですが、夏は日本海で魚釣り、冬は湯殿山でスキーやスノボ、と休日の楽しみもいろいろあります。手軽にリフレッシュできる自然があるのも、鶴岡タウンキャンパスの魅力です。
※[特集] ひろがる慶應義塾—地域連携キャンパスと国内外の拠点(3)は1月7日ごろ掲載予定です。