執筆者プロフィール

大屋 雄裕
法学部 法律学科教授(法哲学)
大屋 雄裕
法学部 法律学科教授(法哲学)
たとえば完全な自動運転車が事故を起こしたとして、被害者に対する損害賠償責任は誰が負うべきなのでしょうか。データを誤って学習したことが原因だったとして、車自体やそこに搭載されたAIを処罰することに意味はあるでしょうか。レントゲン写真を分析するAIが癌の影を見落とし、担当医師もその見落としを見落としたという場合はどうでしょうか。 これらはいずれも、いまはまだないが近いうちに実現するだろう技術に関する問題です。現時点の刑法や民法といった実定法をうまく適用することができるのか、適用できたとしてその結果が望ましいものになり我々も納得するものになるのかもよくわかりません。それでも技術進化の方向性を想像し、確実にくるだろう「その日」に備えて適切な結果を導くための法制度をデザインしておくことが社会的に求められているのです。私も、多くのAI研究者や技術者とともにその作業をお手伝いしています。
「世界が根本的に変わる」「これまでの法制度は無用になる」といった声は常に聞かれます。しかし社会や技術の進化に対応して自らの姿を変え続けてきたのが、共和政ローマで作られた十二表法以来、2500年に及ぶ法の歴史です。そこで生み出されてきた理念や概念は、これからの世界を想像し、それにふさわしい制度を創造するためにも役立つでしょう。過去に学び、未来を創り出すことが求められているのです。