[ステンドグラス] 義塾の留学 〜海外留学プログラムの変遷〜

「外国人」という存在がまだ人々にとってなじみのない存在であったときから、福澤諭吉が義塾に外国人教員を積極的に任用したことからも明らかなように、義塾は古くから海外にその門戸を開いた学塾であった。そして、1899（明治32）年には私学初の教員の海外留学制度が設けられた。教員に欧米の最新の知識と文化を身につけさせるためであり、帰国した教員は義塾の教育と研究の中心的役割を果たした。

塾生の留学で注目すべきは、学生団体 I.I.R.（慶應義塾大学国際関係会）が、アメリカのスタンフォード大学の学生団体の呼びかけで、外事部（国際センターの前身）の協力を得ながらも、大学に先立って独自の交換留学制度を設けたことである。1956年には第1回留学生をスタンフォード大学に送り出した。

1964年に外事部を改組・拡充し、学内の国際活動業務を集中的かつ機能的に行う事務部門として国際センターが設立され、研究者の交流・派遣プログラムが増大していった。また、初めての学生交換プログラムは66年にアメリカのウィンスロップ女子大学（現在は共学）との間に始まった。現在も続く本格的な学生交換プログラムの開始は、72年アメリカのウェスタンミシガン大学からである。続いて75年ジョージタウン大学、メリーランド大学、76年ダートマス大学、香港の中文大学崇基学院、78年にはフランスのパリ第3大学と徐々に世界中に広がった。そして、2014年度には161名を派遣し、15年7月現在の学生交換留学協定校数は117校（全協定校・機関数は291）を数える。

1990年に始まったアメリカのウィリアム・アンド・メアリー大学夏季講座は、今年で開講25周年を迎えた。1693年創立の伝統ある大学でアメリカの歴史・文化・政治を学び、英語によるディスカッションを中心にしたプログラムである。また、義塾と交流の深いイギリスのケンブリッジ大学ダウニング・コレッジ、オックスフォード大学リンカーン・コレッジでの夏季講座のほか、春季ではフランスのパリ政治学院、韓国の延世大学の講座などがある。

各学部や研究科でも独自の短期留学プログラムを実施している。理工学部・理工学研究科はフランスのECN（エコール・サントラル・ナント）語学研修プログラム（全学部・研究科から参加可能）などを主催。医学部でも学部5年生を対象に臨床実習を目的とした約1カ月の短期海外留学プログラムを実施しており、年間約30名の学生が参加している。

2008年には、学部2年・3年を対象に、秋学期は義塾、続く春学期を韓国の延世大学と香港大学で学ぶ3キャンパス合同東アジア研究プログラムも始まった。13年度からはプリンストン大学など欧米の大学からの学生もここに参加しており、その数は年々増加している。より広い世界の学生と交流し、ともに学ぶことができる点が魅力だ。

さらに、海外の協定校に留学し一定のカリキュラムを修了すると、義塾の学位に加えもう一つの学位を取得できるダブルディグリー・プログラムも年々充実してきた。2005年に開始した理工学部・理工学研究科のプログラムでは、フランスのエコール・サントラル各校およびスウェーデンのルンド大学、ドイツ・アーヘン工科大学などで工学修士相当の学位を取得することができる（義塾で取得可能な学位は修士［工学または理学］）。その他にも、文学、経済学、商学など7つの研究科で海外大学等の修士号取得が可能なプログラムが展開されている。また、経済学部では学部生を対象にパリ政治学院とのダブルディグリー・プログラムを12年に開始した。

義塾では今後も、派遣交換留学プグラムをはじめ、質の高い、内容の充実した海外留学の機会を塾生に提供していく。