塾 AUTUMN 2025 NO.328大阪・関西万博静けさの森と大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー医学部 教授1970年の万博が、宮み田た裕ひ章あやろき塾 AUTUMN 2025NO.328 2025年大阪・関西万博において、私はBetter Co-Beingという視座を軸に、静けさの森とパビリオンの構想、実現を担いました。そこで重視したのは、断定的な答えではなく、未来への問いに対する構えを、空間と身体を通じて開くことです。理性と衝動、技術と生命の緊張を象徴したとすれば、2025年はそれらを統合するのではなく、緊張を内包したまま﹁共鳴﹂という新たな共創を試みる場です。共鳴とは、異なるままに響き合うこと。調和や同化ではなく、差異が交錯することで新たな意味が立ち上がる関係の在り方です。SANAAによる建築は、風や光、来場者の行動と呼応する﹁関係の生成﹂として設計され、静けさの森では自然のささやきとアートが交差し、来場者は多様な存在と静かに関わります。この空間に通底するのが﹁最大多様の最大幸福﹂というビジョンです。従来の功利Co-Beingでは、一人ひとりの異なる価値や感性が尊重され、響き主義が数の論理によって幸福を測ったのに対し、Better 合うことそのものが豊かさの基盤となります。分断の時代において、こうした共鳴の構造を社会の中にいかに編み直せるか。その実践の一端が、このパビリオンでした。22 1862 年、幕末の遣欧使節団の一員として「ロンドン万博」を体験した福澤諭吉は、特に万博における「知の交流」に感銘を覚えた。福澤が万博から受け取ったその精神は、“万国博覧会” が名称の由来となった「SFC 万学博覧会」をはじめ、現在の慶應義塾にも息づいている。2025 年 4 月 13 日から 184 日間開催された「大阪・関西万博」には教員・塾生・塾員が多数参加、特集ではその取り組みの一部を紹介する。 未来社会のデザイン─O1共Be鳴tteすr るCo未-B来einへgの─挑─戦慶應義塾と大阪・関西万博 ─いのち輝く
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