塾_328号
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談話室かしう塾 AUTUMN 2025NO.328      総合政策学部 准教授 髙た橋は裕ゆ子こ教員によるエッセイコーナー﹁身近﹂な一人の国家公務員として私は、SFCと官公庁との交流人事により、厚生労働省からSFCに派遣されている有期教員である。SFCと官公庁との交流人事は警察庁との間で2006年に始まり、現在は6省庁まで拡大している。2年半前に着任したばかりの私が交流のねらいや効果を語ることは難しいが、現役の国家公務員である自分の役割については、私なりに思うことがある。政治家や起業家・企業家と違い、公務員は基本的に、自分の名前で仕事をしない。国家公務員は国の中枢で政策に携わるが、関係者の意見や要望を聞き、立案し、意思決定者をサポートする﹁黒子﹂であり、メディアに出るときには省庁名や﹁政府筋﹂﹁政府高官﹂などで表される。そのため、一般的に、国家公務員像の解像度は低く、身近に感じにくい存在ではないだろうか。よくわからない人が言うよくわからない話に興味が湧かないのは当然だ。しかし、国の政策が受け手や担い手から疎遠なものとなり、どうでもいいと思われることは、残念を通り越して問題である。興味を持ってもらうためにすべきことはたくさんあるが、私のSFCでの役割も、これに関係すると思う。私は厚生労働行政に携わってきた経験を基に、政策立案や制度運営を伝えているが、授業でのやりとりだけでなく、学生にとって﹁身近﹂で、﹁会いに行ける﹂﹁等身大﹂の国家公務員である私の存在そのものが、国家公務員や国の政策に興味を抱くきっかけになれるのでは、とおこがましくも考えている。そのため、学生と接するときはなるべく素の自分を出し、自分の言葉で話すよう心がけている。私を通じて、学生たちの公務員や政策に対するイメージが少しでもクリアになり、意見や批判をもらえたら幸いだ。昨年、SFCで企画した中央省庁からの派遣教員による座談会には多くの反応があり、手応えを感じている。国の政策は、多様なプレーヤーの協働で成り立ち、発展する。将来、さまざまな立場で活躍する塾生が、社会のために一緒に汗をかく仲間となってくれることを期待して、残りの任期を励みたい。20

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