塾_327号_夏
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目指すは現代の福澤諭吉慶應義塾で学ぶこと、それは現代の福澤諭吉を目指すということです。独立自尊の人とは?と聞かれることがありますが、私は次のように答えることにしています。自分の判断と行動による結果に対して責任が負える人。きれいな空気のように一緒にいて気持ちよい人。教育・研究からスポーツ・芸術・文化活動に至るまでハードファイターでありながら、負けたときは潔く、その経験を次に生かせる人。これを世界レベルで行い、全社会を正しい方向に導くことが躬き行こう実じっ践せんできる人。福澤先生が学習に励める環境を得たのは比較的遅く14歳の頃からでした。そして19歳では長崎で蘭学に出会い、20歳では大阪の適塾で蘭学を深め、23歳では江の方が有利なように、学びの力や好奇心や志の高さも若いうちにたっぷりと時間をかけて習得しないと、後から習得するのは難しいものです。慶應義塾では、塾生たちが自由意志でとことん学べ、課外活動の機会を享受し、交換留学等に挑戦できる環境を整えています。積極的に慶應義塾が提供するあらゆる学びの環境を徹底的に活用してください。今、日本は極端な少子化で、企業が大学生を貪るようにリクルートしてきます。そして日本の大学生や親の多くが、大学とは企業に入るための予備校と勘違いしている感があります。しかし塾生は現代の福澤諭吉です。自らの時間とペースで、学びや社会活動や趣味や世界の見聞に勤しむことがどんなに大事なことか。大学を起点とする青春が一生涯にわたり一身独立するための学びと挑戦の期間であり、世界に目を向ける期間なのです。塾生の皆さんは青春を無駄にすることなく、ぜひ、大学院にも進学をして、誰もが一目を置く実力と人間性を身に付けてください。社会から請われる現代の福澤諭吉となって、世界を正しい方向に導いていってください。戸で私塾を始め、24歳からは英語を学び、見聞を広めました。社会は福澤先生が生きた150年前と比べて大きく変化しましたが、この間、人間の生物的な変化はほとんどありません。昔の20歳と今の20歳に違いはなく、まさに、10代後半からるのです。まして人生100年の時代。だからこそ求められるのは若いうちに自分でいろいろと試し、失敗も経験し、世界を見聞して、良い意味での自分探しにたっぷりと時間をかけることです。﹃学問のすゝめ﹄は、人は生涯を通じて学び続けなければならないと説きますが、語学やスポーツや楽器などの習得が若いうちい伊藤平2塾 SUMMER 2025NO.327    伊藤塾長重任、第二期目を迎えるゅう慶應義塾長の任期満了に伴い、去る5月27日に開催された理事会において、 2021年から現職にある伊藤公平塾長が選任されました。二期目となる任期は、本年5月27日から4年間となります。と うこ うへ い塾長25歳で米国に渡り、27歳で欧州に渡って20代の学びと経験が人間の一生涯を決め1965 年 生 ま れ。1989 年 慶 應 義 塾大学理工学部卒業。1994 年米・カリ フ ォ ル ニ ア 大 学 バ ー ク レ ー 校Ph.D.( 博 士 ) 課 程 修 了。 慶 應 義塾大学理工学部助手、助教授を経て、2007 年同教授に就任。2017 年4 月~ 2019 年 3 月理工学部長・大学院理工学研究科委員長。2021 年慶應義塾長。イノベーション政策強化推進のための有識者会議「量子技術イノベーション」座長、総合 科 学 技 術・ イ ノ ベ ー シ ョ ン 会議議員、中央教育審議会委員なども 務 め る。 専 門 は 固 体 物 理、 量子 コ ン ピ ュ ー タ、 電 子 材 料、 ナノテクノロジー、半導体同位体工学。Ph.D.(Engineering-Materials Science and Engineering)。 公

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