予防医療センター 准教授 国立がん研究センターの﹁最新がん統計﹂によると、2023年の大腸がん死亡数は、男性2位︵肺がんに次ぐ︶、女性1位となっています。また、米国では大腸がん死亡者数は減少に転じたといわれているのに対し、日本では大腸がん罹患数、死亡数ともに年々増加しています。大腸がんは早期発見、早期治療により治癒が見込める疾患です。ここでは日本における対策型検診︵国や自治体が主導して、特定の疾病の早期発見や予防を目的とした検診︶でまず行われる便潜血検査について解説します。大腸がん検診の対象者は、40歳以上とされています。特に50歳以上の人や家族に大腸がんの既往歴がある場合、リスクが高いとされ、大腸がん検診を受けることが強く推奨されています。便潜血検査には化学法と免疫法があり、以前は化学法が用いられていましたが、現在では大腸の出血をより的確に検出する免疫法が用いられています。1990年代に化学法による便潜血検査の有効性について、海外から複数の大規模な研究結果が報告され、大腸がんの死亡率を15~33%減少させるといわれています。日本においては、厚生労働省研究班による約4万人の追跡調査結果から、便潜血検査の有効性が示されています。実際に免疫法便潜血検査はどの程度の大腸がんを拾い上げることができるのでしょうか? 島町における観察研究では手術が必要な大腸がん全てにおいて免疫法便潜血検査が陽性であったと報告していますが、それほど進行していない内視鏡治療で切除可能な大腸がんや、内視鏡切除が望ましい10㎜以上のポリープ︵腺腫︶は、陽性率31・7%であったと報告しています。東京都大細ほ江え直な樹きそお塾 SPRING 2025NO.326 便潜血検査は一回で行うよりも二回行うことにより、約10%程度上乗せ効果があるといわれています。これらから、日本では免疫法便潜血検査︵2日法︶と、検査を毎年行うことが推奨されています。よく、2日の便潜血検査のうち一回のみ陽性であった場合、もう一度検査を行って陰性であったら、精密検査の大腸内視鏡検査はやらなくてよいと勘違いされている方がいますがこれは間違いです。便潜血検査は、﹁大腸がんではない﹂ということを証明する検査ではなく、大腸がんの可能性が高い人を選別する検査です。2日の便潜血検査のうち一回でも陽性であった場合は、大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。日本においては、大腸がん検診の受診率はまだ低く、受診率を上げていくことが望まれます。ぜひ大腸がん検診を受けるようにしましょう。便潜血検査による大腸がん検診29
元のページ ../index.html#31