塾_327号_夏
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古代ギリシア・ローマ哲学を批判的な視点から捉え直し、ヘレニズム時代から古代後期の哲学、また、後世の古典受容も視野に入れ、その多様な側面に光を当てる研究を進めています。文学部哲学専攻 教授﹁哲学は古代ギリシアで始まった﹂﹁古代ギリシアが輝かしい西洋文明の礎を築いた﹂││今日、こうした前提自体が問い直されています。古代ギリシアは哲学にとって特権的な発祥の地と言えるのか。古代ギリシア哲学はむしろ性差別や人種差別といった西洋思想の負の源泉ではなかったか、と。私自身、無邪気にその偉大さを称揚できた時代に研究していたかったと思ってしまう時もありますが、今だからこそ可能となる批判的な視点があり、研究に新たな刺激をもたらしています。私の専門は比較的マイナーなヘレニズム時代から古代後期までの哲学であり、これまで十分に注目されてこなかった古代ギリシア・ローマ哲学の多様な側面に光を当てることに関心があります。また、後世におけるギリシア・ローマ古典の受容に関する共同研究にも携わっており、そこから﹁なぜ今われわれが西洋古典を学ぶのか﹂という問いに迫る手がかりを得たいと考えています。いずれも日本では専門的に研卒業研究では学生の幅広い関心に応私はもともと引っ込み思案で、一人近こ藤ど智と彦ひうんもこはせみ長谷川希実塾 SUMMER 2025NO.327     究できる環境が限られており、こうした研究の受け皿となることも目指しています。じて指導していますが、学部の研究会ではあえて﹁王道﹂を選び、プラトンとアリストテレスおよびその研究文献を主な素材としています。この二人の哲学は、哲学史上の特別な位置づけゆえに、かえって自由に思索を展開する糸口となります。で本を読んだり音楽を聴いたりするのが好きな人間ですが、研究を通して次第に生まれた国際的な交流を面白く感じるようになってきました。2024年4月に着任して1年が経ちましたが、慶應義塾大学の古代ギリシア・ローマ哲学研究の優れた伝統を受け継ぎつつ、学部生からポスドクまでさまざまな人が同じ研究室の一員として結びつき、さらには世界へとつながっていく││そのような場をつくっていきたいと考えています。が わの ぞ20君 文学部哲学専攻4年古代ギリシアを現代で学ぶ 私たちの研究会は、古代ギリシアの哲学を専門にしており、プラトンやアリストテレスといった哲学者の著作と、その著作に関する研究者の論文を読みながら、古代ギリシアの哲学に触れつつ、それが現代でどのように研究されているかを学んでいます。 また、夏休みには「ゼミ集会」と題された、個人の研究の発表会が行われます。そこでは、院生やポスドクの方々も含め、さまざまな内容の発表を聞くことができ、質問し合ったり意見を出し合ったりして、活発な議論が行われます。私自身も、プラトンの『国家』に詳しい方からのご意見をいただくことができ、非常に学びの大きい一日となりました。今、古代ギリシア・ローマ哲学を問い直す半学半教

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