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[研究最前線] モノとサービスの新たな価値を構築する「サービスデザイン」を研究テーマに(経済学部教授 武山政直)

2013/07/11
武山 政直 経済学部教授
武山教授は、「サービスデザイン」という日本ではまだなじみのない分野を研究テーマに、生活者や企業が参加して新たなサービスを“共創”する手法を探究しています。近年急速に進展しているICT(情報通信技術)を活用し、企業とも協働しながらサービスを戦略的に展開する手法や、未来をリアルにイメージする方法論を学生とともに実践的に開発し、注目を集めています。

※職名等は掲載時のものです。

武山 政直(たけやま まさなお)

武山 政直 経済学部教授
1988年慶應義塾大学経済学部卒業、90年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。93年カリフォルニア大学サンタバーバラ校大学院地理学研究科博士課程修了。94年慶應義塾大学環境情報学部助手、97年武蔵工業大学(現:東京都市大学)環境情報学部講師、99年同助教授、2003年慶應義塾大学経済学部助教授を経て 、2008年同教授。

モノ、人、場所がつながりあったサービスシステムをデザイン

──「サービスデザイン」とは、どのような研究分野なのでしょうか?

サービスデザインは、ヨーロッパを中心に発展してきた新しい概念です。成熟した社会では、モノづくりだけでなく、よりよいサービスをどう生み出していくかが大きなテーマとなっています。ことに情報ネットワークが普及した現代においては、サービスを単体で提供するのではなく、携帯情報端末やPC、テレビなどさまざまなメディアや、モノ、人、場所が相互につながりあったシステムとして提供することで新たな価値を生み出すことが求められています。
こうしたサービスシステムを構築するためには、異なる事業領域を組み合わせて、生活者がまだ気づいていない潜在的なニーズを掘り起こし、イノベーションに結び付けていく方法論の開発が同時に必要となってきます。すでにできあがった事業領域での革新を試みるだけでなく、ときには既存の事業を成り立たせていた要件を分解して、新たな事業領域として再編していく点がサービスデザインの大きな特徴です。

──サービスデザインの考え方を活用した事例にはどのようなものがありますか?

たとえば、今、必要な時に自由に車を使える「カーシェアリングサービス」が注目されていますが、これは情報ネットワークが基盤になっています。運営企業は、稼働している車と稼働していない車がどの場所に何台あるかをGPSを通じて把握するなど、必要な情報をデータベース化し、会員ユーザーはパソコン、携帯電話、スマートフォンなどの端末機器を使って使いたい車を予約し、カーライフを楽しむものです。
これは、車というモノとGPSやパソコン、携帯電話などの情報ネットワークがつながり合ってこれまでにない新しい事業が可能になった一つの例ですが、このほかにも、デジタルオーディオプレイヤーとスポーツシューズを連動させ、好きな音楽を聴きながらプレイヤーに組み込まれたメニューに沿ったトレーニングを行うような、業種を超えた新事業も開発されています。

──従来の発想とは違う次元のサービスが求められている、と。
ええ、これまで製造業はモノをつくりだすことが中心で、サービスはモノを売るオマケにすぎませんでしたが、今やモノとサービスをセットにして提供しようという発想のもと、製造業のサービス事業化が推進されています。
また医療・福祉サービスの分野でも、政府、市民、NPO、企業など、さまざまなプレイヤーが情報ネットワークを通じて新しいサービスシステムの構築を進めています。
従来のマーケティングが、すでにニーズが明らかな課題に対して最適解を導き出す方法論だとすれば、サービスデザインは、どこに問題があるのかわからない状況の中で、生活者の意識していないニーズを探り起こして課題そのものを見つけ出したり、今までなかったようなサービスの仕組みや、モノとサービスの新しい関係性を構築したりしていくための戦略的なプロセスといえます。サービスデザインは、技術の進化、社会構造の変化、生産や消費構造の変化などに対応した研究分野なのです。

学生と一緒に未来のサービスをプレゼンテーション

研究発表会の様子
研究発表会の様子
──研究はゼミ(研究会)の学生と共に進めているのですか?

ゼミでは、学生と一緒になって企業との産学協同研究を進めていきます。3年生と4年生が6~8名ごとにチームを組み、企業などから要望のあった課題をもとに、学生たちがそれぞれの研究テーマを設定し、解決に向けての提案づくりを行います。
これまで、自動車、印刷、情報通信、飲料、報道、広告関係などの多様な企業と共同研究を進めてきました。学生たちにも責任を持たせ、企業に対して魅力的なプレゼンテーションができるよう指導しています。

──実際のプロジェクトを紹介していただけますか。
学生がデザイン・イラストも担当
学生がデザイン・イラストも担当
ある自動車会社の研究所とタイアップしたプロジェクトですが、ロボット技術を活かした未来のパーソナルモビリティ(1人乗り移動機器)が近い将来開発されることを前提に、その製品とサービスの概要や魅力をWebサイトを通じて紹介し、消費者にインターネット調査でその製品を評価してもらいました。
将来パーソナルモビリティが発売されたときには、消費者の生活がどのように変わるかを想像しながら、製品の紹介サイトと架空の企業のサイトを作成しました。製品の価格、仕様、販売モデルなどを、実際の利用シーンを想定しながら練り上げていき、コンセプトムービーまで製作します。社長インタビューを掲載するなどして、企業理念も含め、細部までイメージを膨らませ、サイトにアクセスしたユーザーに、未来の乗り物のイメージを伝えていったわけです。
こうした、まだ見ることのできない未来社会の暮らしやビジネスを、さまざまな“証拠物件”を通じて想像的に描き出しプロトタイプを提示する手法を、サービスデザインの分野では「リバース考古学」と呼んでいます。未来への想像力をフィクションとして導入することによって、今の生活実感では得られないモノやサービスの価値を評価することができるのがこの手法の魅力です。
昨年(2012年)の12月に実際にサイトを公開し、消費者から多くの反響や提案をいただきました。
「Curimo」という未来のパーソナルモビリティのサイト
「Curimo」という未来のパーソナルモビリティのサイト
詳細はhttp://curimo.com/外部サイトへのリンク
架空企業のコラボティクス社の企業サイト
架空企業のコラボティクス社の企業サイト

公共団体やNPO、中小企業とのコラボレーションも視野に

──先生がサービスデザインの研究に至るまでのプロセスを聞かせてください。

学生時代は経済学部で都市経済学・経済地理学のゼミに所属し、都市や地域等の空間に経済活動がどのように発生し集積するのかに興味を持ちました。大学院に進学し、さらに研究を深めるためカリフォルニア大学の地理学研究科に留学し、コンピュータを使って空間的データを解析する研究に打ち込みました。住宅が都市空間に拡大していくプロセス、あるいはシリコンバレーにIT企業が集積していくプロセスを衛星画像を使ってプロットしていくなど、経済地理学とコンピュータを組み合わせた研究です。
留学先から慶應義塾に戻ると、ちょうど指導教授の高橋潤二郎先生が湘南藤沢キャンパス(SFC)の立ち上げに尽力されていたときで、助手としてSFCで研究活動を続けることになりました。当時はまだそれほど携帯電話が普及していなかったのですが、ノートパソコンや電子手帳などモバイル機能を備えたIT機器が登場してきて、私も街をフィールドにしてIT機器を使うと生活がどう変わっていくのかを実験的に研究するゼミを立ち上げたりしました。

──その体験が、サービスデザインの研究に結びついていったわけですね。
ゼミでアイデアを出し合う
ゼミでアイデアを出し合う
はい。3年ほどして他大学に移り、情報処理入門のカリキュラムをつくることになりました。そこでは画像処理ソフトを使ったビデオ編集を指導するとともに、工学的発想で都市をフィールドワークするゼミを主宰しました。その後、慶應義塾大学に戻って経済学部に着任することになり、都市をフィールドに、ITを活用したマーケティングや消費者行動の研究、またそれをいかにビジネスに結び付けていくかなどをテーマに、自分なりの手法を編み出してきました。
これまでのノウハウをベースに、新しいサービスを創りだすための方法論を体系化していきたいと数年前から取り組んできたのがサービスデザインです。
最近では、ビジネスのテーマやヒントを模索する企業や、新しい分野の人材育成を進めている企業との産学共同のプロジェクトも増えてきたところです。

──これからの研究の方向性を聞かせてください。

一般の生活者を巻き込んだサービス開発の方法論をさらに進化させたいですね。また、大手企業だけでなく、地方公共団体やNPO、あるいはオリジナルな技術をもつ中小企業をサポートするなど、新しい領域にチャレンジしてみたいと考えています。
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