メインカラムの始まり
[FRONTIER] 熱で磁気の流れを創る
2009/06/15 (「塾」2009年SPRING(No.262)掲載)
内田 健一(うちだ けんいち) 理工学研究科修士課程2年
齊藤 英治(さいとう えいじ) 東北大学金属材料研究所教授(元理工学部専任講師)
スピンゼーベック効果の観測
身の回りにあるさまざまな物質の構成要素である電子は、電気と磁気(スピン)を併せ持っています。電子の電気的な性質のみを利用してきた従来のエレクトロニクスにスピンも積極的に取り入れることで、新しい機能や特性の創出を目指す試みが世界的規模で盛んに行われています。現在のIT社会を支えているハードディスクの磁気ヘッドやMRAM(磁気ランダムアクセスメモリ)などの磁気デバイス技術のさらなる発展には、磁気の流れ「スピン流」を自在に制御することが非常に重要な課題となっており、スピン流生成技術の開拓が急務となっています。
私たちの研究グループは世界で初めて、電流や磁界を用いずに、磁石の両端に温度差を付けるだけでスピン流を作り出せることを明らかにしました。金属の両端に温度差を与えると電圧が生じるという現象はゼーベック効果として古くから知られていたため、私たちは今回発見した新現象を「スピンゼーベック効果」と命名しました。スピンゼーベック効果の発見に関する研究成果は、英国科学誌「ネイチャー」(2008年10月9日付)に掲載され、注目を集めました。スピンゼーベック効果を用いれば、磁石の両端に温度差を付けるという非常に単純な方法でエネルギー損失を伴わずに磁気を生成できるため、磁気記憶素子における新しい書き込み・読み出し技術や次世代コンピューター素子の開発に大きなブレークスルーを与えると期待されています。
私たちの研究グループは世界で初めて、電流や磁界を用いずに、磁石の両端に温度差を付けるだけでスピン流を作り出せることを明らかにしました。金属の両端に温度差を与えると電圧が生じるという現象はゼーベック効果として古くから知られていたため、私たちは今回発見した新現象を「スピンゼーベック効果」と命名しました。スピンゼーベック効果の発見に関する研究成果は、英国科学誌「ネイチャー」(2008年10月9日付)に掲載され、注目を集めました。スピンゼーベック効果を用いれば、磁石の両端に温度差を付けるという非常に単純な方法でエネルギー損失を伴わずに磁気を生成できるため、磁気記憶素子における新しい書き込み・読み出し技術や次世代コンピューター素子の開発に大きなブレークスルーを与えると期待されています。
新しい物理は身近なところに
スピンゼーベック効果の物理を開拓するにあたり、最も苦労したのは実験結果を的確に再現する理論の構築でした。既存の理論ではスピンゼーベック効果の新奇な特性を記述できなかったため、理論の基礎から創り上げていく必要があったのです。しかし、このような新しい現象を開拓していくプロセスにこそ、物理の面白さがあるのだと思います。
磁石に温度差を付けるだけで生じるスピンゼーベック効果は、人間がそれを観測する手段を今まで持ち合わせていなかっただけで、実際は元々身近に存在していたものです。2008年のノーベル物理学賞に3名の日本人研究者が選ばれたことで基礎物理学に大きな注目が集まっていますが、素粒子のような目に見えない世界だけでなく、未開拓の物理はまだまだ私たちの身近なところにも眠っているのです。
磁石に温度差を付けるだけで生じるスピンゼーベック効果は、人間がそれを観測する手段を今まで持ち合わせていなかっただけで、実際は元々身近に存在していたものです。2008年のノーベル物理学賞に3名の日本人研究者が選ばれたことで基礎物理学に大きな注目が集まっていますが、素粒子のような目に見えない世界だけでなく、未開拓の物理はまだまだ私たちの身近なところにも眠っているのです。
























