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2010年04月02日 平成22年度大学入学式式辞

慶應義塾長  清家 篤
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 新入生の皆さん御入学おめでとうございます。慶應義塾大学を代表して皆さんの入学を歓迎致します。また入学式にお見えいただいております新入生の御家族の皆様にも,心よりお慶び申し上げます。
 慶應義塾大学では学生を塾生,卒業生を塾員と呼んでいます。今日も多くの塾員がお見えです。とくに慶應では毎年の入学式に,卒業50年を迎えられた塾員をご招待しています。皆さんの後ろのスタンド席をちょっと振り返って頂きたいのですが,たくさんの卒業50年の塾員の方が,全国から皆さんの入学を祝うために駆けつけてくださっています。
 卒業50年の皆様の御列席を,新入生と共に御礼申し上げます。

 さて,われわれの世界は今,大きな構造変化に直面しています。なかでも日本の直面する最も大きな,かつ長期にわたる構造変化は,人口の少子高齢化です。現在既に日本では65歳以上の高齢人口は総人口の5分の1を超えて,世界一の高齢国になっていますが,皆さんが大学を卒業する頃にはこれが4分の1を超え,さらに皆さんが40歳台の働き盛りには3分の1,そして皆さん自身が65歳以上の高齢者になるころには,人口に占める高齢者の比率は5人に2人にまで増えます。
 出生率の低下によって人口も激減し,現在1億2700万人ほどの日本の人口は,今世紀の中ごろには1億人を割り込むと予想されています。つまり,これからの日本は,人口に占める高齢者の割合を急速に高めつつ,総人口は若者を中心に急速に減少するという,未曾有の経験をすることになります。
 このことは,日本の社会を支える働く人たちが激減することを意味します。このままでは,経済活動は停滞し,結果として国民生活も,また国家財政も成り立たないということになってしまいます。そうならないためには,少子化対策によって人口減少を食い止める,あるいは女性や高齢者などにももっと働いてもらうようにするといった対策が必要です。
 ただし少子化対策が成功して生まれてくる赤ちゃんが増えたとしても,今から生まれる赤ちゃんが日本経済に貢献するようになるまでには少なくとも20年以上はかかります。また女性や高齢者にもっと働いてもらうとしても,人口の減少には追いつきそうにありません。そういう状況の下で,経済活動を維持発展させるには,働く人口は減っても,働く人ひとりひとりがよりたくさんの経済価値を生み出せるようにしなければなりません。とくに皆さんのような若者に,より高い能力を身に付けてもらわなければならないのです。

 ではそこで求められるのはどんな能力でしょうか。もちろん様々な能力が求められますが,一つ共通に言えるのは,自分の頭でものを考え,問題を解決する能力ということです。これは特に今日のような大きな変化の時代には大切です。
 というのは,人口の構造が未曾有の規模で変わるような大きな変化の時代には,これまでの延長線上でものを考えたり,問題を解決したりすることは困難になるからです。新しい状況を自らの頭で理解し,その理解にもとづいて問題を解決する能力がもとめられます。そして実は慶應義塾の創立者である福澤諭吉も,同じように大きな変化の時代を生きた人でした。福澤先生は封建の江戸時代に生まれ,激動の幕末に成人し,明治維新を経て,近代社会となった日本を代表する啓蒙家,教育者,ジャーナリストでありました。
 福澤先生は,そうした大きな変化の時代を生きた同時代人の人生を,「恰も一身にして二生を経るが如く」,つまり一人の人間がまるで二つの人生を生きたようなものだ,と言っています。そしてそうした大変化の時代に頼りにされたのが学問,とくに「実学」というものでありました。実学というのは,実際の役に立つ学問という意味もありますが,福澤先生がこの実学という言葉に込めた意味は「科学」とくに「実証科学」ということでした。
 学問の中には,昔だれか偉い人が言ったことを金科玉条のようにして教えるものもありますが,実学というのはそうではなく,学問の対象としての事物が具体的に存在し,それについての考え方を,実験や調査などによって確認,検証できる学問です。具体的な問題について,自分なりの説明を考え,その考えを誰もが納得するような方法,たとえば実験や,統計分析,文献調査などによって確認するということです。そしてこうした科学的方法の手順は,実は意識するとしないにかかわらず,自分の頭で考えるときには必ずたどるプロセスなのです。

 では,そうした自分の頭でものを考える能力は,どのようにしたら磨かれるのでしょうか。そのためにはまず,すでに確立された学問を,教養教育の中で幅広く学んでください。それにはそうした学問を確立した人たちが,自分の頭で考えた軌跡を追体験するという意味があります。また事物の真の姿は,学問を通じて分かるということを再確認してください。
 その最も分かりやすい例は天体の動きでしょう。われわれが日常的に見ている空では,朝になると太陽が東から昇り,夕方には西に沈む,夜になれば星が季節ごとに天空を動く,まさに地球が静止し,太陽や星が動く天動説が,実感にぴったりです。しかし天空の真の姿はそうではなく,地球こそが自転し,太陽の周りを公転する,地動説によって理解されることを,われわれはコペルニクス以来の天文学によって知っています。
 つまり見たままのものや実感と真実は異なるということです。これはおそらく人間だけに可能なことであり,これこそが知性というものでしょう。
 このようなことを慶應義塾大学の充実した教養教育で身に付けるとともに,専門教育においてはしっかりと自らの研究をしてください。つまりまだ誰も解答を与えていない問題を見つけ,その問題にとりくんで答えを出す,ということです。具体的には,卒業論文を書くこと,卒業研究をすること,あるいはその前段階での様々なレポートをまとめるといったことです。
 それらの作業にはすべて,問題,つまりテーマを見つけ,その問題がなぜ起きているかということについての仮説,すなわち自分なりの仮の説を作り,その仮説を誰もが納得するような方法,たとえば自然科学であれば実験,社会科学であれば統計や調査,人文科学であれば文献調査などによって検証し,そして結論を導くというプロセスが含まれます。それは,まさに皆さんが,論文作成などに限らず,どんな場合でも自分の頭で考えるときの手順であり,自分の頭で考える能力を磨くのにうってつけの機会なのです。
 さらに,教室の授業だけでなく,皆さんの楽しむ課外活動もまた自分の頭でものを考える良い機会となります。例えば皆さんの中には体育会などで活動する運動選手となる方もいるでしょう。その活動は単に体を鍛えるだけでなく,同時に頭を鍛えているわけです。
 スポーツ選手は,つねにどうしたら試合に勝てるか,どうしたら上手くなれるかという問題と仮説をかかえ,どの方法が最も効果的か練習などで検証して,その結果をもとに試合に臨んでいるわけです。とくに慶應義塾の運動選手はただ指導者のいうことを聞くだけでなく,自分の頭で考えて工夫をすることで強くなってきた伝統をもっています。もちろんこうしたことは文科系のクラブ活動などでも同様です。体育会や文化クラブで活躍した学生が社会に出ても活躍することが多いのはこのためだと思います。

 幅広い教養を身に付け,奥の深い研究をし,存分に課外活動をしてください。そしてそのことによって,自分の頭で考える能力を磨いてください。そのことが,新しい価値を生み,難しい問題を解決する力を皆さんに与えます。
 盛りだくさんのことを皆さんに要求しているようですが,皆さんにはそれをこなす能力があります。またそれは楽しいことでもあります。

 教養を身に付けることも,研究を深めることも,また思い切り課外活動をすることも,皆さんにとっては,機会,チャンスです。皆さんは素質に恵まれ,そしてそれをさらに伸ばす機会にも恵まれています。が,恵まれた人には,それを活かす義務もあります。皆さんの素質を慶應義塾大学で存分に伸ばしてください。
 そして将来的には,そうして伸ばした皆さんの能力を,皆さん自身の幸せと同時に,社会全体の幸福の増進のために活用してもらいたいと思います。そのような意味のある能力を伸ばそうとする皆さんを,慶應義塾は精一杯応援します。そうした皆さんへの期待を込めて,あらためておめでとうございますとお祝いを申し上げ,私の式辞と致します。

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