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2008年01月10日 創立150年記念の年を迎えて

慶應義塾長  安西 祐一郎
 明けましておめでとうございます。平成20(2008)年の初春になりました。福澤諭吉先生の173回目の誕生日を皆様とともにお祝いをしたいと思います。壇上にいらしていただいております福澤ご宗家福澤範一郎様ご夫妻に心からお慶びを申し上げます。

 今年は,慶應義塾創立150年記念の年です。150年にわたり多くの先達の努力によって,慶應義塾が今,国際的にも立派な位置を占めつつある,その歴史を顧みまして,義塾社中の皆様と今日おいでの皆様にご指導,ご鞭撻,ご支援を賜っておりますことを,あらためて深く感謝申し上げたいと思います。

 昨年は政治,経済,あるいは社会におきましても,国内外でいろいろなことがありました。国際社会では特に世界がアメリカの一極集中から多極化の時代に向かい,それが国内にも大きな影響を与えていることが実感された年だったと思います。

 たとえば,日本のGDP が世界全体に占める割合は一昨年に9 %台まで落ち込んでいます。発展途上国経済の拡大等によって日本経済の占める地位は相対的に下がってきています。経済だけでなくいろいろな暗いニュースがありますが,日本の未来を明るくするためにはこれからの国際社会で,また地域社会で独立したリーダーとして活躍できるような,専門的な知識とキャリアと教養をもった人間,福澤先生の言葉で言えば「独立して孤立せず」,そういう人間をどうしても育成しなければいけない時代がやってきました。21世紀の新しい世界を見通した教育の変革が真に求められている時代になりました。

 一方で,百数十年の間いわば官主導の国家としてやってきた日本は,新しい社会になかなか対応できない。150年前にも同じようなことがあったわけですが,欧米列強が日本の鎖国の扉を叩いたときに,当時の国際社会に通用する政策を打ち出すことのできた人間というのは,本当に少なかった。そういうなかで福澤先生が塾を開かれたわけであります。この福澤先生の志はむしろ150年を経た今こそ必要だ,新しい世界に向けての教育が日本こそ必要だと,これは今日お越しの皆様共通の思いではないかと思います。

 教育だけではなく,学塾のかかわるあらゆる面において,大学,学校が世界の変化に呼応して,開かれた学塾になっていかなければならない。国際社会に通用する,国際社会のリーダーになることのできる専門的な知識とキャリアと教養を兼ね備えた人間を,何としても育成しなければならない,そういう時代になったことは明白であります。

 そうしたなかで,日本だけではなくアジア全域をとりましても,150年の歴史を刻む近代総合学塾というのは,慶應義塾をおいてほとんどありません。その義塾は私学として,私塾として一致団結して多くの困難を乗り越えてきました。その実績と経験をもって,慶應義塾は21世紀の日本と世界を先導します。学内で進んでおります教育・研究・医療あるいは,学生のための支援等々,その実践は大きくいえば,今申し上げたことのための新しい発展でありますし,慶應義塾創立150年記念事業は,福澤先生が150年前に抱いた夢と志を今の日本に対して果たす事業だととらえることができます。

 今日は年のはじめであり,特に創立150年の年のはじめです。まず学内のことを申し上げて,それから創立150年のことをいくつか申し述べたいと思います。 学内の近況ですが,慶應義塾は昨年もたいへん力強い歩みを進めてきました。特に各学部,大学院研究科,研究所,研究センター,一貫教育校等,それからいろいろな部署,部門において,献身的な努力が続けられています。教学の質の向上をはじめとして,多くの結果が出ています。日頃から慶應義塾の発展,教学の発展に尽力していただいている方々に,あらためて深く感謝を申し上げます。

 たとえば,昨年の4 月には,文学研究科国文学専攻の前期博士課程に,日本語教育学の分野が開設されましたし,商学研究科の修士課程には研究職コースと会計職コースができました。また,健康マネジメント研究科には博士課程が開設されました。経済学研究科をはじめとして他大学との単位互換も進んでおりますし,湘南藤沢キャンパスでは未来創造カリキュラムをはじめ,さまざまな新しい試みがなされるようになりました。通信教育部では,いわゆるeラーニング,遠隔教育の試行が始まっております。

 多くの学部,研究科,一貫教育校等々,新しい教育カリキュラムや入試制度が始まっており,国内の主要大学との連携も進んでおります。理工学研究科ではダブルディグリーのプログラムの1 期生が修了しました。また,タイの中央銀行総裁であり義塾の卒業生でもあるタリサ・ワタナガセ博士等の方々に名誉学位が授与されました。そして,慶應医学賞がブライアン・J.ドラッカー博士と満屋裕明博士に授与され,先導研究センターの設置によって,研究の活性化もさらに進むようになりました。月が瀬リハビリテーションセンターは開設30年を迎えております。

 また,公認会計士の試験については33年続けて1位を保っておりますし,国の競争的研究資金であるグローバルCOEは,交付決定の総額でいえば私学で1 位であります。医学部ではクリニカルリサーチセンターの活動があり,また,世界が確実にその方向に向かっているデジタル化による知の共有については,義塾のメディアセンターが外部の機関と連携して,慶應義塾の蔵書を世界中で閲覧可能にするプロジェクトを進めております。ハーバード,スタンフォード,オックスフォード等の大学も同様のプロジェクトを進めていますが,ちょうど今日から,福澤先生のいくつかの著書と慶應義塾関連書籍のデジタル版が世界中で閲覧できるようになります。

 国際展開について多少申し上げますと,昨年北京にオフィスを開設しまして,ソウル,ロンドンとあわせ3 ヵ所になりましたが,ほかにも海外拠点としては韓国の延世大学,中国の清華大学,イギリスのケンブリッジ大学,アメリカのスタンフォード大学等に設置されており,湘南藤沢キャンパスが教育研究協力を行っております東南アジアの連携拠点を含めますと,慶應義塾の連携拠点は30数拠点にのぼります。昨年にはまた,シンガポール国立大学と既存の交流協定に加えメディア関係の共同研究施設の設置を視野に入れた協定を締結し,上海の復旦大学には東アジア研究所のオフィスを設置しました。

 昨年は,スウェーデンのカロリンスカ・インスティテュート,フランスのエコール・ポリテクニークやHEC 経営大学院,アメリカのプリンストン大学ウッドロウ・ウィルソンスクール,ライス大学,ニューヨーク学院高等部の隣にあるマンハッタンヴィル・カレッジ,エジプトのカイロ大学,台湾の国立政治大学,スペインのコンプルテンセ大学,イタリアのボッコーニ大学,カナダのクイーンズ大学,ニュージーランドのオタゴ大学,またインドのトップレベル11大学等の大学と連携協定を締結,海外の質の高い教育研究機関との連携は200を越えました。留学生,海外留学や研修に行く塾生の数も急速に伸びており,短期間の留学を希望する外国の人々のために特別短期留学生制度を創設,留学生数は,質の高さを念頭に置いて,今年1000人程度に,2015年には1500人程度にすることを想定しています。

 スポーツにおきましても,体育会を中心として多くの活躍がありましたし,個人もまた,世界,アジア,日本のレベルでもって,優勝を含めて多くの活躍がありました。特に慶應らしい気概と粘り強さ,慶應には一芸入試もスポーツ推薦入学もないわけで,そういうなかで予想を覆して勝利した部が多かったということは,ここでぜひ申し上げておきたい。また,世界ではじめて大学主催の国際テニストーナメントが庭球部主体の運営で行われました,これも申し上げておくべきことだと思います。

 今年は4 月から,経済学研究科と法学研究科のジョイント・ディグリーのプログラムが始まることになっています。また,経済学部と経済学研究科については5 年間で早期に修士号を取得する一貫教育プログラムも始まる予定であります。また,国内においても開かれた学塾していくために,たとえば,政策・メディア研究科等も含めまして,地方自治体との連携が進みつつあります。

 4 月には,共立薬科大学との合併によりまして,新しく薬学部,大学院薬学研究科が設置されます。多くの関係者の多大なご尽力によってこれまで順調に準備がされてきましたが,特に共立薬科大学関係者の方々には,深く感謝を申し上げなければなりません。4 月からは新しい薬学部と薬学研究科が,薬学の教育研究だけではなく,他学部や研究科等との連携によって,慶應義塾における健康,生命,医療等々の分野を総合的に推進する一翼を担っていただければと考えております。

 世界の大学の動向はきわめて急速に変化をしておりまして,主要大学間の国際的なネットワークづくりが重要な課題になっています。慶應義塾はそのなかでもたいへんよくやっていると思います。1 月末にはダボス会議のなかで世界学長会議が開催されますが,これに私も出席いたします。慶應義塾としてはそれだけではなく,ベトナム,ニューヨーク,ロンドン,北京,あるいはニューデリー等を含めて国際シンポジウム,ワークショップを開催してきましたし,また,今年の6 月26日から3 日間,環太平洋大学協会の学長会議を日本ではじめて慶應の主催により東京で行います。それから,今年は日英修好通商条約締結150年にもあたりますが,英国大使館とタイアップをいたしまして,英国のノーベル賞学者3 人を招き,両方の150年記念の講演会を行うことにもしています。

 この春には塾高の野球部が選抜高校野球で甲子園に出場するだろうという状況になっておりますし,明後日はラグビー部が大学選手権決勝を戦います。8 月には野球部が,慶應150年とブラジル移民100年を記念してブラジルに遠征をいたします。また, 4 月24日には塾員として向井千秋君に次いで2 人目の宇宙飛行士である星出彰彦君が宇宙に飛び立つ予定であります。

 4 月からの2008年度は,経常収支の健全化と同時に,創立150年記念事業についても収支を健全に保ちながら,事業の成功に向けて全力をあげます。国際連携の推進,学生の支援,奨学金,宿泊施設の充実等の検討,研究レベル向上のための施策充実検討等々も行っていきたいと考えています。特に創立100年以来のものも多い老朽化施設について,創立150年記念事業の期間内で,内容の新生とともに建て替えていく計画を進め,環境・安全・健康キャンパスを創っていきます。

 経営改革については,財政・経営システム改革,また人事・給与制度改革,病院経営改革等を進めています。財政・経営システム改革については,経理システム等の構築を進めています。人事・給与制度改革については関係者の尽力によって,働く者が報われる制度の検討,計画が鋭意進んでいます。病院経営改革につきましても,前病院長をはじめとする病院関係者,病院経営ボード等の方々のご尽力で,病院単体のいわゆる黒字化,および医学部と病院を併せた数値目標であるマイナス15億円収支差額を達成しています。これからは新しい病院長のもとで,薬剤,人事等を含めまして,組織構造改革が進むものと期待しております。

 昨年は,義塾の発展に多大な貢献をされました石川忠雄元塾長のご逝去等たいへん残念なこともありました。また,国内外も激動の1 年でありましたが,今述べましたようにたいへん多くの方々のご尽力によりまして,慶應義塾は教育・研究・医療,あるいは学生の支援,国際活動等々発展を続け,また,財政の面でも健全性の強化を図ることができてきていると思います。そして今年2008年になり,福澤先生の誕生記念会をこのように皆様とともにお祝いをすることができ,そして創立150年の記念すべき年を迎えることができたということは,慶應義塾にとりましてまことに素晴らしいことだと思います。

 創立150年記念事業についても,いくつか申し上げたいと思います。記念事業は2005年10月に10年計画で出発しました。まず,できるだけ学生のためにということを考えて塾生のための未来先導基金を創設いたしました。すでにさまざまな活動が行われています。また,下田学生寮をつくり,昨年には日吉体育館の卓球場部分の建設も始まっております。

 昨年には,「これからの一貫教育」諮問委員会を設置して,その議論を踏まえて横浜市の学校予定地の公募に応募し,学校事業の予定者として採択をされました。今のところは2011年4 月開校の予定で,新しい初等中等教育校の内容を検討中です。これにつきまして最も大事なことは,この学校に入学する子どもは2030年に25歳ぐらいだということです。2030年の日本と世界がどうなっているのか,先ほど国内外は激動の時代だと申し上げましたが,2030年の世界は今とはまったく違った形になっていると思います。そういう世界でリーダーシップをとっていけるような子どもたちを育成するには,日本の学校の教育内容を一新するような内容をもった学校でなければ意味はないと考えています。新しい学校についてはこの点が最も大事なことです。

 また,昨年来,日吉キャンパスでは第4校舎の綱島街道側に新しい教育棟の第1 期分の建設工事が始まっており,来年の3 月に竣工,そして来年の4 月に入学する1年生から使う予定になっています。これからの時代のさまざまな授業の形態に対応できるような教育環境をつくっています。信濃町キャンパスにおいては,この1 月末に共用施設棟(仮称)が竣工する予定です。それから,前から検討が続けられている総合予防医療センター(仮称)については,予防医療と早期発見の高度な医療活動の受け皿となるような計画でさらに検討を進めています。去年の4 月に信濃町キャンパス改革・刷新プロジェクトを発足させまして,医学部,病院関係者の議論とも連携し,内部の組織構造改革,経営改革,病棟の建て替え,総合予防医療センター(仮称)の設置等々を含めた,世界に冠たる新しい医学,医療の場を創るための議論が相当のピッチで進んでいます。この春には構造改革,病棟の建設等を総合した基本構想を出せるものと期待しています。

 また,この春4 月には大学院メディアデザイン研究科と大学院システムデザイン・マネジメント研究科の2 つの新しい大学院が出発します。明治時代には福澤門下生の手によって,金融から保険,あるいは電力,さまざまな製造業等多くの近代産業が生まれ発展していったわけでありますが,これからの時代には,また慶應義塾が先導する新しい産業の勃興が必要であります。それが日本の将来を助けていくと思います。特にディジタルメディア,それから国際的な大規模なシステムのプロジェクトマネジメント,この2 つの分野は今の日本に人材が払底している双璧であり,この2 つの大学院が,これらの分野における日本で最初の高度な人材育成の場になると考えております。

 そして今年の9 月には,日吉キャンパスに複合施設(仮称)の竣工を予定しています。この施設は,環境に優しい建物に与えられるCASBEE(建築物総合環境性能評価システム)評価において,横浜市の最高ランクの認定を受けておりまして,良質の音楽ホールにもなる500人規模の講堂,保育園,国内公認のプール等々を含んでおります。また,隣接の陸上競技場も,内側を人工芝にした最高レベルのトラックを有する公認陸上競技場として改装される予定であります。11月8 日には,この新装なったキャンパスで創立150年記念式典を挙行いたします。その前日の11月7 日には,創立100年のとき以来の慶應義塾創立150年記念切手が発行される予定であります。また,『創立150年記念写真集』,『慶應義塾史事典』もこのときまでに合わせて現在編纂中です。『慶應義塾150年史』につきましては,十分に時間をかけて作ることで別途検討が行われています。

 日吉の記念館につきましても,新しい記念館の建設計画が進展しており,来年4 月に記念館の解体を始め,2010年の9 月に竣工の予定で, 1 万人規模の式典等が可能な新しい記念館建設の立案をしています。スポーツ施設についてもいろいろ計画が進んでいます。

 三田キャンパスについては,2011年の竣工を目途として未来先導館(仮称)を含む南校舎の建て替え計画を進めております。未来先導館(仮称)はミュージアムの機能やリサーチの機能等を備え,また,社会人の方々もお越しいただけるような場をつくっていきたいと考えています。今年はまず南別館(仮称)の建設から始めまして,この西校舎も創立100年のときの建物であり,その建て替えが併せて検討される予定です。三田では文系4 学部が中心となって,力を合わせて新しい教育プログラム,総合的なプログラムをつくっていこうという動きがあります。また,社会人にも開かれ,塾生とともに学ぶ新しい教育の場,学習の場をつくっていく計画も考えられています。

 理工学部,湘南藤沢キャンパス等におきましても,たとえば,SFC の未来先導塾等々,未来に向けたいろいろな事業が検討されております。一貫教育校でも教育環境,施設の整備に向けて検討が行われています。経営管理研究科とビジネススクールは日吉キャンパスに新設される複合施設(仮称)に移り,来年度には新しいカリキュラムを開始する計画があり,国際教養系の大学院についても検討を重ねているところです。

 記念事業のイベント関係についても,たとえば記念講演会「学問のすゝめ21」シリーズは塾員の皆様に多大なご支援をいただいて成功裡に進められています。他にもすでに多くのことが行われています。また塾員,塾生,みんなが集まって創立150年を楽しめるようなイベントも企画されています。

 昨年には,福澤先生ご誕生の地である大阪で,誕生地碑顕彰碑建立定置祭が,大阪慶應倶楽部によって行われました。大阪慶應倶楽部には以前から碑の管理についてたいへんお世話になっているところであります。今年はその隣接の地に大阪小拠点を設置いたしまして,特に関西地域,西の地域への発信を義塾としてやっていきたいと考えています。地域社会との連携は,国際連携とともに大切になっておりまして,社会・地域連携室(仮称)を新設して地域,地方自治体と連携する計画も進みつつあります。

 いろいろに申し上げてきましたが,創立150年記念事業は,慶應義塾の教育・研究・医療・学生の支援・社会貢献等々を国際レベルで飛躍的に高める,そして堅固なものにしていく,そのための投資です。一方で,教学と経営の基盤充実を図っていくための経常財政の強化がきわめて重要です。これらを両立させて推進していくのは簡単ではありませんが,関係者がその意義を理解して,そして一致協力して進めれば必ずできることだと考えています。塾員の皆様,関係者の皆様にもぜひご支援いただきたく,よろしくお願い申し上げます。

 150年記念事業の募金につきましては,福澤武募金委員会委員長,また,田中順一郎,小林陽太郎副委員長をはじめとした副委員長,募金委員の皆様,また,慶應義塾関係のみならず,世の多くの方々に多大なご尽力をいただいてまいりました。2010年9 月までの5 年間で実施中の募金は,皆様の温かいご支援によって,開始から2年あまりが過ぎたところで,申込みベースで202億円となりました。入金ベースでもきわめて順調に推移しておりまして,この場をお借りして,あらためて厚く御礼申し上げます。

 創立150年の記念事業については,先ほどから縷々申し上げておりますように,中身が大事であります。150年に及ぶ日本の近代と慶應義塾150年の歴史の先を創る大きな出発点になる事業です。その意味でもぜひ皆様になお一層のご支援,ご指導をお願いしたいと考えております。記念事業のテーマは,「未来への先導」という,今の日本にとって最も必要なテーマです。10年にわたる事業計画によって行われていく事業は,それぞれがとても大切なものです。また,事業全体を総合的な形で見ていくと,義塾が未来の世界と日本をあらためてリードしていく,先導していくための大きな姿がはっきり浮かび上がってきます。福澤先生の夢と志を実現し,今の日本が抱えている困難を乗り越えるためにも,慶應義塾創立150年記念事業は大きな意義をもっています。再々になりますが,ぜひ皆様のご指導,ご支援をお願い申し上げます。

 学内のこと,また創立150年のことを,いろいろに申し上げてきました。今日はここで,恒例でありますけれども,第32回小泉信三賞全国高校生小論文コンテストの表彰が行われます。小泉信三賞は石原克己君,次席が入澤夏実君,佳作が塩澤翔君,堀口慎太郎君,毛利友理香君であります。彼らの論文は『三田評論』の1 月号に載っておりますので,ぜひお読みいただきたい。素晴らしいです。日本の高校生にこれだけの思考力と表現力をもっている人たちがいるということは,創立150年の年のはじめにあらためて皆様と共有をしておきたい。こういう素晴らしい若い人たちが将来の日本,世界を担っていくことになるでしょう。それをわれわれは応援していかなければならない。慶應義塾もまたそういう人たちをもっともっと生み出していかなければならない。それが創立150年の年のはじめにあたっての私の感想でもあり,また,これからの考え方でもあります。

 慶應義塾は,世界の劇的な変化を見通して,「未来への先導者」として,理念と信念と勇気をもって,これからの日本と世界のリーダーを育んでいかなければなりません。創立150年記念事業のもつ意義は,慶應義塾だけでなく,日本,アジア,世界にとって,きわめて大きなものであります。150年記念の年の新年にあたり,あらためてこのことを皆様と共有させていただければ幸いに存じます。

 最後になりますが,今日ご列席の皆様,慶應義塾社中の皆様,関係者の方々,すべての方々のご健康,ご多幸,ご活躍をお祈りいたしまして,年頭のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

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